キッチンカーの気候変動を含む潜在的なリスクへの対応

夏の暑さを「もう耐えられない」と感じるようになったのは、2〜3年前からでした。

そして今年は、集中豪雨に台風、熱帯低気圧。さらに秋雨前線の停滞による長雨。
週末になるとなぜか天気が崩れる——そんなサイクルが、ずっと続いています。

背景にあるのは、気まぐれな天気だけではありません

この要因のように地球規模での気候変動があげられます。

キッチンカーは、言わずと知れた「外での販売」を基本とするスタイルです。

雨が降れば公園から人がいなくなる。イベントも中止になる。

それはそのまま、売上にダイレクトに響いてきます。

そして2026年、ISO(マネジメントシステム規格)の改訂で
「気候変動」
が正式に規格本文へ組み込まれました。

ISO 14001は2026年4月15日に、ISO 9001は2026年9月16日に、それぞれ新版が発行されています。

これは、何も大きな組織だけに当てはまる話ではありません。

キッチンカー業界にも、そのまま当てはまる話です。

今回は、キッチンカー業界における気候変動への対応と、

その先にある「潜在的なリスク」について考察していきたいと思います。

それでは、どうぞ。

ここ5年ほどの気候変動の推移

まずは、感覚の話を、データで確認していきます。
「年々暑くなっている気がする」
「雨の降り方が変わった気がする」

——その感覚は、数字にはっきり表れています。

日本の平均気温は、確実に上がっている

気象庁は、都市化の影響を受けにくい全国15地点の観測値から「日本の年平均気温」を算出しています。
その基準値(1991〜2020年の30年平均)からの偏差を並べると、次のようになります。

注目すべきは、上位に並ぶ年がすべて直近に集中していることです。

歴代トップ7が2019〜2025年の7年間で占められており、
日本の年平均気温は長期的に100年あたり約1.44℃の割合で上昇しています。

さらに「夏」に絞ると、体感に近い数字が出てきます。

2025年の夏は、平年を2.36℃も上回る、統計開始以来もっとも暑い夏でした。
群馬県伊勢崎で41.8℃という国内の歴代最高気温が観測されたのも、この年です。

「じゃあ2026年(今年)は少しマシだったのでは?」と思われるかもしれません。
たしかに全国平均では歴代5位に落ち着きましたが、
今年は地域差が非常に大きい夏でした。

東海から西日本にかけては記録的な高温。
40℃以上の「酷暑日」を観測した地点はのべ36地点となり、
2025年(30地点)を上回って過去最多を更新。

一方で関東は、東京都心の夏平均気温が平年差+0.3℃と、
それほど極端ではありませんでした。
そのかわり関東は、台風と前線による「雨」に振り回された夏となりました。
2026年8月には、台風15号が1951年の統計開始以来はじめて茨城県に上陸しています。

つまり——
「暑い年」と「雨の年」が交互に来るのではなく、
暑さと雨が地域ごとにバラバラに襲ってくる。

これが、いま私たちが置かれている状況です。

昨年うまくいった対策が、今年そのまま通用するとは限らないということでもあります。

「雨の降り方」が変わっている

キッチンカーにとって、気温以上に直接的なダメージになるのが「雨」です。

ここで押さえておきたいのは、
年間の降水量そのものは大きく増えていないという点です。

変わったのは「降水量」ではなく「降り方」

降らないときは降らず、降るときに一気に降る——という形に変化しています。

気象庁「日本の気候変動2025」では、全国約1,300地点のアメダス観測値をもとに、
次のような変化が報告されています。

約50年で、激しい雨がおよそ1.5〜1.9倍。
しかも将来予測では、この傾向がさらに続くとされています。

キッチンカーの現場に置き換えるなら、こういうことです。

この天候の読みにくさも、厄介なリスクになります。

台風は「数」より「質」が変わった

台風についても、よく「増えている」と言われますが、発生数そのものは実はそれほど増えていません。

ご覧のとおり、数字だけを見ればおおむね「平年並み」です。

では何が変わったのか。
台風一つひとつの勢力が強まり、もたらす降水量が増え、大型化・長寿命化している——ここが本質です。

実際、2026年8月には台風15号が、1951年の統計開始以来はじめて茨城県に上陸しました。
2026年6月3日には台風6号が和歌山県に上陸しており、これは統計史上4番目に早い上陸記録です。

つまり、

過去の経験則が通用しづらくなっている、ということです。

これは、地球温暖化が進行している現代において、避けられない事実になります。

キッチンカーの気候変動への対応

では、キッチンカーは具体的にどのような対策をとっていったらいいのか。

すでに多くの店が取り入れている「暑さ対策」

気温上昇については、

  • 車内へのエアコン・スポットクーラーの設置
  • 空調服やネッククーラーの装着
  • 遮光タープ・断熱シート
  • 営業時間の前倒し・後ろ倒し(日中のピークを外す)

といった対策は、すでに多くのキッチンカーで取り入れられているでしょう。
当店のようにわたあめを扱う場合は、湿度対策も死活問題になります。

ただ、正直に言うと——
それだけでは、気候変動への対応の根本的な対策にはなっていません。

なぜなら、これらはすべて
「暑くなったあとに、暑さをしのぐ」対症療法だからです。

スポットクーラーを増やしても、雨で公園から人が消えたら売上はゼロです。
空調服を着ても、イベントが中止になれば売上はゼロです。

もっと、潜在的なリスクを検討していかなければいけないのです。

ISOが求める「気候変動への対応」という考え方

ここで、少しISOの話をさせてください。
遠回りに聞こえるかもしれませんが、この考え方がそのままキッチンカーに使えます。

まず前提として、
「気候変動」はすでに2024年2月の追補版(Amendment 1:2024)で、
ISO 9001をはじめとするすべてのマネジメントシステム規格に組み込まれていました。

そして2026年、それが新版の規格本文へ正式に取り込まれ、さらに整理・強化されています。

ISO 14001:2026では、規格の4.1「組織の状況」において、

組織が考慮すべき事項として
気候変動・汚染レベル・天然資源の利用可能性・生物多様性や生態系の健全性
といった環境状態を含めなければならない、

と明確化されました。

難しく聞こえますが、要求していることを噛み砕くと、たったこれだけです。

大事なのは、エアコンを付けたり、スポットクーラーを設置したりすることではありません。

それだけでは、この気候変動の対応として根本的な対策にはなっていないからです。

自分の事業にとって何がリスクなのかを洗い出すこと

「潜在的なリスク」を特定し、そのリスクを想定したうえで、
今後どう営業していくかを検討する。

それが、キッチンカー業における本当の「気候変動への対応」だと私は考えます。

キッチンカー業における潜在的なリスクとは

それでは、キッチンカーにおける潜在的なリスクとは何なのか。

一番大きなリスクは、「売上減少」になります。
キッチンカーも商売ですから、ここは避けて通れません。

そこで、「売上減少」につながる要因を掘り下げていきます。

リスク① 気候変動

冒頭にも述べましたが、まず雨が降れば外に人がいなくなる。イベントも中止になる。
それは、ダイレクトに売上に直結してきます。

夏場の高温化に伴い、そもそも日中に外に人がいなくなります。
当店のように公園に出店するキッチンカーにとっては、大きな影響を受けます。

ここで見落とされがちなのが、「中止にならなかった日」のダメージです。
一見出店できることにありがたいと思えるのですが、
隠れた費用対効果という側面があります。

それには、下記のような要因があります。

  • 出店料は発生する
  • ガソリン代・高速代・人件費が発生する
  • 設営・撤収の手間及び営業時間の拘束は晴天時と変わらない
    (設営撤収の手間はむしろ増える)
  • それでいて、来客数・売上は晴天時の半分以下

つまり、売上は下がるのに、拘束時間・コストはほとんど下がらない
この費用対効果こそが、後々ボディブローのように効いてきます。

そして、機材そのものへのリスクも忘れてはいけません。
猛暑下での長時間稼働は、発電機や冷蔵設備の故障リスクを確実に押し上げます。
真夏のイベント当日に機材が止まる
——実際に当店も経験しましたが、これも立派な「潜在的な緊急事態」です。

※天候と売上の関係については、こちらの記事でも触れています
→ キッチンカーとお天気事情

リスク② キッチンカー業界のレッドオーシャン化

私が開業した2021年当時はまだそれほどでもありませんでしたが、
コロナ以降、社会的な後押しもあり、キッチンカーは爆発的に増えています。

数字で見てみましょう。

東京都のキッチンカー登録数自体は約10年で2倍ですが、
何かしらのプラットフォームに登録しているキッチンカーは2年で5倍と急増しています。

つまり、「出店したい事業者」の数は爆発的に増え続けています。

常にキッチンカー事業者は、出店できる場所とイベントを探しています。
当方でイベントの出店募集をかければ、ものすごい数の応募が殺到します。

そして近年、
明らかにイベントの規模(集客)とキッチンカーの台数が見合っていない
イベントも散見されるようになりました。

これが何を意味するか。

つまり、イベントに出店しても思うような売上が上がらない、利益が残らない
という事例が増えているということになります。

そしてここに気候変動リスクが掛け算で乗ってきます。
もともと薄い利益構造のところに雨が降れば、一発で赤字です。

「台数が多く競争が激しい」というリスクと「天候が読めない」というリスクは、
別々ではなく同時に襲ってくる——これが現在の構造です。

リスク③ 社会情勢

景気後退の懸念があるにもかかわらず、急激な円安や物価高が続いている社会情勢があります。

資材や食料品の物価上昇は、そのまま仕入原価に反映されます。
そして社会情勢の不安は、お客様の購買意欲にも直結してきます。

総務省の消費者物価指数でみると、
2025年8月時点の食料(生鮮食品を除く)は前年同月比+8.0%
2026年に入って上昇率そのものは鈍化していますが(2026年8月の東京都区部では、生鮮食品を除く食料が前年同月比+3.6%)、
値上がりしたあとの価格水準そのものは高止まりしたままです。

2027年4月からの「食料品消費税1%」をどう見るか

そしてもう一つ、キッチンカー事業者が必ず押さえておくべき動きがあります。

2027年4月から2年間、飲食料品の消費税率が8%から1%に引き下げられる見通しです。

2026年8月5日に基本方針が閣議決定され、2026年9月15日には税制改正大綱が閣議決定されました
(実際の適用には今後の法案成立が前提となります)。

キッチンカーは基本的にテイクアウトになりますので、対象になります。

一見すると追い風に見えます。

実際、売価を据え置けば手残りは増える計算です。

しかし、単純な追い風になるとは限りません。
現役の店主として、また行政書士として、私が気になっているのは次の点です。

  1. 販売価格の見直し圧力
    「減税されたのだから安くなるはず」という空気は、間違いなく生まれます。
    値下げ要求に押されれば、減税分はそのままお客様に流れ、手残りは変わりません。
  2. コストとのミスマッチ
    1%になるのは飲食料品だけです。
    容器・資材・燃料・出店料・車両整備費は10%のまま。
    仕入の税負担が下がる一方で、経費側は変わりません。
  3. レジ・価格表示・インボイスの改修
    1%・8%・10%が混在する場面が生じます。適格請求書(インボイス)の税率区分も見直しが必要です。
  4. 2年後の「戻し」
    時限措置である以上、2029年4月には元に戻ります。一度下げた価格を戻すのは、下げるときの何倍も難しい。ここまで見越した価格設計が要ります。

※インボイス制度そのものについては、こちらの記事もどうぞ → インボイス対応は必要か

衛生管理への要求は、確実に強まっている

また、近年は衛生管理への対応要求が強まってきています。
食中毒の発生ニュースはよく見かけますし、HACCPの義務化への対応もあります。

ここも数字で見てみましょう。

事件数・患者数ともに増加傾向にあり、2025年の患者数は前年の約1.7倍。
発生施設は5年連続で「飲食店」が最多です。

そして、ここで気候変動と衛生管理がつながります。

気温が上がれば、細菌は増えやすくなります。
車内温度が上がれば、食材の温度管理は難しくなります。
つまり猛暑は、そのまま食中毒リスクの上昇を意味します。

HACCPに沿った衛生管理は、2021年6月から原則すべての食品等事業者に義務化されています。
ただ、キッチンカー事業者のうちどれだけが実質的に対応できているのかは、
正直ブラックボックスです。

※HACCPの具体的な導入方法はこちら → HACCP(ハサップ)の導入方法

リスクを一枚の表に整理してみる

ここまでのリスクを、ISOのリスクアセスメントの考え方にならって整理すると、こうなります。

こうして並べてみると、はっきりすることがあります。

気候変動は、単独のリスクではありません。
他のすべてのリスクの「増幅装置」として働いている、ということです。

キッチンカーの生き残り戦略

ここまで様々なリスクを挙げてきました。

それでは、今後キッチンカーを営むにあたって、
どのような戦略を持って営業していけばいいのかを考察していきます。

戦略① 収入の柱を増やす

これを言うと身もふたもないと思われそうですが、
キッチンカー一本で生計を立てるというのは、
今後ますます厳しい環境になってくると推測されます。

そこで、キッチンカー業以外にも収入を得られるものを作っておくことは、
それだけリスク分散につながります。

近年では、
夏場を休業するキッチンカーや、
土日祝だけ営業するキッチンカースタイルも珍しくなくなってきています。
複業の一つとしてキッチンカーをするというのは、現実的にみても合理的になります。

また、柱の増やし方は、単にキッチンカー以外の収入を増やすだけとは限りません。
いま持っている資産を別の売り方に変えるという方向もあります。

下記は、その参考例になります。

  • 天候に左右されない売り方
    通販(オンライン)・卸・ギフトが典型例となります。
    当店もオンラインショップを持っていますが、天候に左右されない販売方法になります。
  • 企業案件、プロモーション
    企業からの買取案件が典型例になります。
    当店の場合、CMへのわたあめ提供のようなお仕事をいただくこともあります。
    通常の出店販売とはまったく別の収益形態になります。
  • ノウハウの提供
    開業相談、イベント企画・運営、場所づくり など。
    当方もPLACE Lab合同会社としてこの領域に取り組んでいます。
  • 屋内(ポップアップ出店)・軒下案件の比率を上げる
    屋根のある商業施設や屋内でのポップアップ出店をすることで、
    天候リスクそのものを構造的に下げられます。

戦略② 他キッチンカーとの差別化を目指す

キッチンカーの数は爆発的に増えています。
イベントに出店すると、
商材が被っているキッチンカーが見受けられることも珍しくありません。

どこにでもありそうな商材、いろいろなものを販売し、個性のないキッチンカーは、
今後ますます厳しくなってくると予想できます。

キッチンカーを招致する側からの視点で言えば、
「別にあなたのお店でなくてもいい」ということになります。

もしあなたが現在売上の伸び悩みを抱えているキッチンカーだとしたら、
商材でも、見栄えでも、サービスにおいてでも、
何か1つでも個性を発揮した唯一無二のキッチンカーを目指すことが、
現状を打破する最善策ではないでしょうか。

そうすれば、自ずと出店依頼のお声がけがかかることが多くなり、
必然的に有利な出店条件・場所で出店できる機会が多くなります。

戦略③ 社会の情勢に敏感に反応する

社会情勢に常にアンテナを張り、迅速に対応することも、今後は求められてきます。

来年に始まる食料品消費税1%への対応や、
近年多くのニュースにも取り上げられる食中毒問題。
HACCPの義務化はすでに始まっていますが、
どれだけのキッチンカーが対応しているのかはブラックボックスです。

衛生面への要求は、今後ますます強まっていくでしょう。

逆に言えば、ここは先に動いた者が有利になる領域です。

基本的なことになりますが、

  • 衛生管理記録をきちんと残している
  • 保険に加入している
  • 遵法性に則った仕様のキッチンカーである
  • 税制改正への対応を済ませている
  • 営業許可・食品衛生責任者の情報を整えている

こうした「地味な備え」は、
商業施設や自治体、企業イベントの出店審査で確実に効いてきます。

大きな取引先・イベントほど、
味やビジュアルより先に「この事業者に任せて大丈夫か」を見ているからです。

戦略④ 出店先を「分散」させる

気候変動への対応として、出店先の特性を分散させることも効果的です。

すべてを屋内に寄せる必要はありません。

公園やお祭りでの空気感は、キッチンカーの醍醐味そのものですから。

大切なのは、
「出店先全部が同じ天気に左右される構成」になっていないかを、
一度点検してみることです。

戦略⑤ 記録をとって、振り返る

ISO的な観点で効果的なこととして、PDCAを回すことです。

P:プラン(計画)
D:ドゥー(実行)
C:チェック(確認)
A:アクション(実行、見直し)

決めて、やって、記録して、見直す。
キッチンカーに置き換えるなら、たったこれだけで十分です。

これを1年続けるだけで、自分の店の「弱点」が数字で見えてきます。

そして、下記のような要因を分析します。

  • 何℃を超えると売上が落ち始めるのか
  • 雨天中止の割合、想定される損失額
  • 雨天決行の場合、通常出店に比べてどれくらいマイナスになるのか
  • どの出店先が、天候に強いのか
  • ハズレイベントの共通点
  • 経費(出店料、移動コスト等)・仕入額の見直し

勘と経験は、キッチンカーにとってかけがえのない財産です。
ただ、気候がこれだけ変わってしまった以上、過去の勘はもう当てになりません。

だからこそ、記録なのです。

これが、ISOが言うところの「気候変動への対応」の、
いちばん地に足のついた実践だと思います。

まとめ

ここまで、キッチンカー業界の気候変動への対応と、
潜在的なリスク分析を考察してきました。

整理すると、こういうことになります。

当店も含めたリスクへの対応として今後どう営業していくかを考えた場合、
今は重要な局面に直面していると言えます。

今後生き残っていくのか、廃業するのかは、
これらリスクの認識、対応方法にかかっています。

キッチンカーという商売は、外の世界とまっすぐつながっています。
だからこそ楽しく、だからこそ外の世界の影響の変化をまともに受けます。

気候変動を止めることはできません。
キッチンカー業への参入者は今後も増えていくでしょう。
物価も、税制に伴う景気も上向く気配はありません。

けれど、備え方は変えられます。
自分で生きる力を身につける。

今後ますます厳しくなってくるキッチンカー業界を取り巻く環境を考慮した時、

どう生き残っていくか。

いま一度、振り返ってみてはいかがでしょうか。

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